団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

読んで、聞いて、話をする。青空読書会の魅力、徹底解剖!

最終更新日>2022/5/18
監修>平田はる香 文責>山本ひかる 写真>若菜紘之


団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

今回で7回目の開催となった青空読書会。初めまして、わざわざスタッフの山本です。7回目の読書会に参加してきましたのでレポートと共に魅力をお伝え致します!

実はこちらの読書会、本を読んでいる時間はイベント参加時間の半分未満なのです。それ以外の時間は殆どコミュニケーションに割かれています。リピート参加の方も多いこちらのイベント。今回は青空の下繰り広げられる不思議な読書会の魅力の秘密を、徹底解剖します!

〈青空読書会とは?〉
わざわざの姉妹店「問tou」がある芸術むら公園内にて、参加者の皆様と一冊の本を読み感想を共有する会。第7回は平野啓一郎=著『私とは何かーー「個人」から「分人」へ』を6名で分担して読みました。

徹底解剖1.一人で全部読みません!

この読書会の特徴の一つとして、参加者一人一人が本の一部を分担して読むことにあります。例えば、全部で5章ある本の場合で1章の担当になったとします。そうすると、他の部分は一切読まずに読了します。

その他の文章は他の参加者が読み、読了後のあらすじ発表会でそれぞれの分担した章を発表します。文章のすべてを読んではいませんが、他の参加者の話に耳を傾けることで、本のあらすじが大凡わかるというしくみです。

例えば、小説がテーマとなった場合(第6回のモーパッサン=著『女の一生』など)、自分が割り当てられた章が最終章だったとすると、全く知らない登場人物が突然終わりを告げるという衝撃的な内容のみ読むことになります。

その時に、全体像が見えないままこれまでのストーリーに何が起こったのか、想像力を働かせながら読む体験自体が初めてのものとなり、頭をフル回転して読み解こうとするだけで一瞬で時間が過ぎていきます。この普段できない読書体験が過集中のような錯覚を起こし、いつもと全く違う読書体験となるのです。

団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

参加者の皆様はランダムに自分が担当する章を割り振られていきます。

徹底解剖2.「聞く、そして伝える」読書の秘密。

あらかじめ設定された読書時間内で、参加者の皆様は自分が担当した章を読み解いていきます。読書時間が終わると、参加者の皆様は1つのテーブルに集まります。そして1章から順番に、その章を担当した参加者が他の参加者に向けて、その章のあらすじと感想を発表していきます。この読書会の発表の場では、参加者の皆様は「読み手」としてだけではなく、「聞き手」「伝え手」として、異なる立ち位置から本を読み解いていきます。

まず「聞き手」の面白さは、集中して人の話に耳を傾けるという点にあります。「聞き手」の参加者は、「伝え手」の参加者が発表の場で話す内容でしか、その章の内容を知ることができません。そのため、発表の内容をただ単に「聞く」のではなく、自分の担当する章との話の繋がりを探したり、読書時間に自分がイメージした本の全体像と照らし合わせたりすることで、「聞き手」として、より能動的にその発表の場に参加することができます。

この読書会は、友人と一緒に参加した場合をのぞくと、参加者の皆様はお互いのことを何も知りません。見ず知らずの人たちの話に集中して耳を傾ける時間は、新鮮でどこか充実した気持ちになります。

また、自分が担当した章以外は、その章を担当する「伝え手」の解釈を通して、本の内容を知ることになります。人によって、本の解釈の仕方は様々です。その日たまたま集まった参加者の皆様のバックボーンによって、その本の読み取り方が変わるという点にも、この読書会の面白さがあります。

団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

発表の場では、それぞれの担当部分を順番に発表していきます。

「伝え手」として、自分が担当した章の内容を発表するとき、定められた読書時間内でいかにその章の内容を読み取ることができたかが重要となります。この章で重要なポイントはどこなのか、著者が伝えたいことは何なのか、必死にその章の内容に食らいついていきます。

自分のその章への理解の深さが、ほかの参加者の本の理解度にも繋がるのです。そうしたプレッシャーを感じながらの読書は、一人の読書では体験できない緊張感があります。限られた時間内にその章の内容をインプットし、そのすぐ後に他の参加者に向けてアウトプットする。全て完璧にこなすことは難しいですが、このライブ感がテンポよく、発表が終わった後は達成感を味わうことができます。

この発表の場では、「聞き手」「伝え手」どちらの立ち位置にいても、能動的にその場に参加することができます。一生懸命聞き、一生懸命伝え、一人一人が全力で本の読解に取り組んでいきます。そうすることで、参加者の皆様の間にチームワークのような不思議な連帯感が生まれます。先程まで個人競技として取り組んでいた読書会が、突然、参加者全員で一冊の本を読解することに挑戦するという団体競技になるのです。これこそが「聞く、そして伝える」読書の魅力なのです。

団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

読書時間中に白い紙に書き留めたメモをもとに発表していきます。

徹底解剖3.ディスカッションする楽しみ。

最後に参加者全員で、本の内容についてディスカッションする時間が設けられます。ここで初めて参加者の皆様は、お互いに言葉を交わし合うことになります。ディスカッションと聞くと、一見、話しづらそうだと感じる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この青空読書会でのディスカッションでは、先ほどの真剣勝負で取り組んだ発表会の後に行われるため、ほどよく緊張感が解けた状態で、ざっくばらんに自分が感じたことを話すことができます。

この本を通して著者が伝えたいことは何なのか、それぞれの意見や解釈を伝え合い、違いや共通点を見つけることで、さまざまな視点から本を読み解くことができるのです。

時には、本の内容から逸れた話に発展することもあります。読書会ではこのディスカッションする時間が一番盛り上がります。年齢も性別も住む場所も、仕事も何もかもが違う属性の人たちが集まることにより、多種多様な価値観に触れることができるのが新鮮で面白いのです。読書会が終わった後も参加者たちはお互いにあいさつを交わし合ったり、そのまま一緒に食事をしたりと、読書会を通して新しいコミュニティのようなものが生まれているように感じます。

団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

全員同じ本を手にしていますが、読んでいる章はバラバラです。

第7回青空読書会レポート

第7回は、平野啓一郎=著『私とは何かーー「個人」から「分人」へ』を一緒に読み解きました。これまでの青空読書会で取り上げてきた本と比べると、今回はページ数が少なめだったため、同じ章を複数の参加者が担当し、それぞれに読解した内容を発表しました。同じ章の内容でも人によってあらすじの説明の仕方や解釈の方法が大きく異なり、その違いを見つけるのが面白かったです!

また最後のディスカッションの時間では、著者はなぜこの本を書いたのかという話から、SNSとのうまい付き合い方についての話題まで、どんどんと話が膨らんでいきました。今回の読書会は、20代から60代まで幅広い年代の参加者が集まったため、より幅広い視線から本を読み解くことができたのではないでしょうか。

参加者のなかには、以前にこの本を一度読んだことがあるという方がいらっしゃったのですが、今回の読書会を通して、この本への印象が大きく変わったそうです。読み手、聞き手、伝え手として、一冊の本を様々な視点から読み解き、人と話をすることで、本への解釈が変わっていくことも、この読書会の魅力かもしれません。

団体競技として本を読む!第7回読書会レポート

青空読書会後には、ドリンクとホットドックをご用意しています!

第8回青空読書会の予約がはじまりました。

ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。また、第8回青空読書会の予約を開始しました。第8回は5/28(土)9:00より、若松英輔=著『悲しみの秘義』を読みます。今回で8回目の開催となる青空読書会ですが、エッセイ本は今回が初めてです。またこの著書のなかでは、これまでの読書会で取り扱った本のなかの数冊が参考文献として引用されていますので、これまで読書会に参加したことがある方にとっては、以前の読書会の学びと繋がっていく回となるのではないでしょうか。ぜひ多くの皆様のご参加をお待ちしております。


団体競技として本を読む!第7回読書会レポート