弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

無駄や曖昧さをあえて残す

最終更新日>2023/11/1
監修>平田はる香 文責>いしはら 写真>若菜紘之


2023年6月、大阪・八尾市にある木村石鹸の本社工場に取材に伺いました。木村石鹸代表の木村さんとわざわざ代表の平田で話が盛り上がる中で、「弱いからこそ強い」とする経営観の共通点が出てきました。

弱いから強いとはどういうことか、そんな社長が作る会社とはどんな会社なのか。取材を通して両社の共通項が見えてきました。

▼目次効率は、あえて求めない決めすぎないから選択肢が増える小さなものづくりを重ねる弱さが引き出してくれること「風呂床洗浄剤」サンプル、お配りしています!

効率は、あえて求めない

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

木村石鹸は、商品開発に効率を求めず、石鹸を手間のかかる釜焚きで製造し続けています。

石鹸作りには面白さがあるからと、材料を購入すれば効率化を図れるところを自社で作り続けてきました。だからこそ、木村石鹸は目先の売上や話題性に囚われることなく、本当によいと思えるものを商品化し続けられたのです。

さて、読書家の木村さんは、タレブ著『ブラックスワン』『反脆弱性』に大きな影響を受けたと言います。この本で木村さんは、不確実性をできる限り取り除いた堅牢な組織にはかえって脆さがあること、一見無駄があって非効率的に思える不確実で曖昧な状態は融通の利きやすさとなり、強みになり得るのだという気付きを得たそうです。

効率がすべてではない。木村石鹸の開発現場以外にもこの考えは浸透しています。

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

木村石鹸代表・木村祥一郎さん

例えば、お給料は一般的には役職や年功序列で決まっている会社が多いかもしれませんが、木村石鹸は給与を自己申告しています。社員が自分の1年間の仕事内容と報酬を提示し、社内で検討するという制度で給与を決めています。時間と手数がかかるので一見非効率かもしれませんが、社員が主体的に未来を考える良い機会になっているそうです。

社内でチームを固定せずにプロジェクト単位でチームを編成するのも、木村石鹸の特色のひとつです。役職や部署といった枠の中にスタッフを当てはめて仕事を進める方が会社としては扱いやすいかもしれません。ですが木村石鹸は個人のポテンシャルを100%出し切ってほしい、仕事を楽しんでほしい思いが強く、こうした自由度の高いチーム組みをしています。

決めておけば効率的かもしれないところを、固定せず、曖昧にしておくことで生まれる柔軟性は何ものにも代えがたいように感じます。

決めすぎないから選択肢が増える

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

1.安全で安心なもの
2.無理のない価格帯
3.生産者との良好な関係性
4.きちんと作られたもの
5.環境に配慮したもの

実は、どれも限定しすぎないことを意識しています。「添加物不使用のもののみ扱います」「長野県産だけです」とすれば目立って魅力的かもしれませんが、ここまで絞ると選択肢は狭まります。できるだけ健康的なものを選びたいけれども、地域のものは積極的に取り扱いたいということから、ルールはあれど限定しすぎないという今の曖昧な状態にたどり着きました。こうした適度な緩さは、いい塩梅の多様性につながっていると感じています。

小さなものづくりを重ねる

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

多様性という点は、木村石鹸の生産体制にも当てはまります。小ロットでも生産可能な機械を導入し、ニッチな商品開発にもフットワーク軽く対応できるようにしているので「こんなものがあったらいいよね」という気付きが開発につながりやすくなっています。小さなものづくりで小さなファンを生み出し続けているんだ、と木村さんはいいます。

ひとつひとつは小さくても、積み重なるとどうでしょうか。こうした多品目での展開も間違いなく木村石鹸の強みです。

弱さが引き出してくれること

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

わざわざ代表・平田はる香

漫画「ONE PIECE」をご存知でしょうか。主人公・ルフィが海賊王を目指して冒険する物語で言わずと知れた大ヒット作品です。そんなONE PIECEが人気を集める理由にはルフィの弱さがあるのでは?と平田は言います。

作中でのルフィは肝心なところで不在だったり、周りがつい手を貸したくなるような存在に映ります。リーダーとしては弱いかもしれないけれど、周囲を巻き込んで成果を上げ、熱い友情が生まれていく様子には、何か人を惹きつけるものがありそうです。

弱さ、適度な隙、緩さがあると、「自分も力になれそうだ」と周囲の自発的な行動を引き寄せるのかもしれません。無駄や曖昧さをあえて残すことや、小さなものづくりを大事にしている姿勢は、おのずと社員が主体的になり、会社にしなやかな強さをもたらしてくれているようです。木村石鹸の社内いっぱいに広がる雰囲気のよさ、そして商品の質の高さの源泉を今回の取材から感じ取りました。

弱さは強さ。木村石鹸とわざわざの共通項

木村石鹸の皆様、ありがとうございました!